どの位、自分がここにいるのか…それさえも、遥か昔に考えることを放棄してしまった 自分には、大切なものが…確かにあった筈なのに
視界が霞む それでも何故か、今日は意識を飛ばすことをしたくなかった そうすることで…何かが変わるような、そんな気がした
コツコツコツ―――
ここは地下室だ だから、足音がよく響く こんな所までやってくる人物を、彼はたった1人しか知らなかった
「………」
やって来た男は、息も絶え絶えに衰弱した男を見下ろしながら、楽しそうに笑っている その男の存在など知らないように、彼は振舞う そうすることでしか、もう抵抗する手段がないのである そんな彼に男は近づき、耳元にそっと囁く 酷く、耳障りな声である
「山芋よ、いい知らせだ」
彼は確かに、男に山芋と呼ばれた それは、紅の隣にいる男とは…また別の存在であった
