緑の背後からやって来たのは、真っ赤の奇抜な仮面をつけた妙な男である その男を見た瞬間、緑の表情は明らかに曇った
「……赤、ただいま」
緑は上ずったような声で、どうにかそう答える その答えに、赤と呼ばれた男は不服そうだ
「お前は何か、持ち帰ったのか?ピーマンとは違う香りがするが」
その問いに緑は逡巡しつつも、こう答えた「………いいえ、何も」と
緑にとっても、それは咄嗟のことではあったがそれは確かに意味があったのである 緑が、始めて赤という人物に反抗したということでもあったのだが……
「……くっ」
青年は、緑の部屋でようやく覚醒した 何が起こったのだろうか――思い出せない…何故体中が痛いのか…、そのようなことを考えながらベッドの上で身体を起こした
突然、意味の分からない忍者装束の緑っぽい奴に連れ去られたということはきれいさっぱり忘れてしまっているようだ それはある意味、幸せだと思う
「ここは、どこだ?」
呟いてはみるものの、その答えを知るものがこの部屋にはいない というか、この部屋には誰もいない 緑が出て行ってから、数刻の時間が経過していた
青年は仕方なく思い身体を引き摺りながら、ベッドから立ち上がった そして、部屋の中を見回してみる
広さとしては、八畳くらいだろうか 簡素なベッドが1つと、机があるだけで色も全て白で統一されている 要するにこの部屋からは、人間味が感じられない、無機質な空間だった
試しにドアノブを捻ってみたが、案の定開かない カチャカチャっと、虚しく音が響いていくだけである
「くそっ、何だってこんな」
答えるものがいないのは分かっていても、青年は呟かずにはいられなかった 同時に、段々苛立ってきている
――その時、急に扉が開いた
「うわぁ」
「……ぇ」
部屋の外から帰ってきた緑と、部屋から出ようともがいていた青年 ドアが急に開いたことによって、二人はドスンと衝突した
