男爵は、不安げに自分よりも小柄な男、女王の腰に手をまわす 押し潰されそうな心を支えるには、そうするしか方法が見出せなかったのだ
何度も何度も、女王、女王と繰り返す……
「男爵っ」
女王は、男爵と同じことで頭を悩ませていたものの、そんな不安定な男爵の方が気がかりでならなかった だから、男爵の手を払いのけることもできないし、例の件に探りを入れに行くこともできない 八方塞である
「女王、俺のそばにいてくれ ずっと、ずっとだ」
「あぁ…俺とお前は二人で一人 何があっても離れはしないさ」
そう答えながらも、女王はその言葉に確信をもつことができなかった きっと、時が来れば二人はこの世界から消えてしまう それでも、側にいるというと呼べるのだろうか
紅と山芋は、慌ててやってきた薩摩芋を見つめていた
「だから、大変なんですってば、生徒が連れ去られて……」
「それは、大変だな」
呑気な声をあげたのは山芋だけで、紅にいたっては興味にも値しなかったようである
「……何でそんなに呑気なんですかっ!!ピーマンに世界を支配されてしまいますよっ」
「何だと…」
紅は慌てて座っていた椅子から立ち上がった その勢いで、椅子が大きくガタンと後ろに倒れた
「……行かなければンっ」
紅は慌てて走り出した が、突然停止した そして、薩摩芋と山芋の方に振り返ってこう訊ねた「出口はどこだン?」
それを聞いて二人は、顔を見合わせて噴き出した
「紅芋様……どうか落ち着いて下さい」
あくまでも冷静に、山芋は紅に助言をする しかし、そんな山芋に目も暮れず、紅は焦って狭い部屋をぐるぐると見回している そんな二人を見つめていた薩摩芋は、頭を抱えてしまっている
「紅芋様っ!!」
山芋は、我慢の限界に達してしまったようで、紅をがしっと両手で捕まえた その腕の中で、尚も紅は暴れ続けている
「刺さってたまるかン〜」とか、意味不明な事ばかり叫びながら、紅はどうにか山芋の腕から抜け出した そして、走り出した まっすぐ壁に向かって……
ビタン――と大きな音をたてて、紅は壁と正面衝突した しごく、当然の結果である
「紅芋様……」
「紅くん……」
二人はそっと紅の名前を呼び、哀れんだ目で紅を見つめた
