誰よりも辛そうで、それでもいつも微笑みを絶やさない、強い人だと思う そんな兄をとても尊敬していて、その人が自分と血がつながっているということが誇らしくてしかたなかった
「お兄ちゃん」と小さな声で呼んで、自分より幾らか高い場所にある兄の手を引っ張る そうすると、兄は自分と同じ目線になるように腰を下ろして「どうした?」と優しい声をかけてくれた
この声が好きだ この声を聞くために、何度も何度も呼びかける それでも、兄は嫌な顔ひとつしないでいつだって自分にかまってくれた
物心つく前から、自分と兄は違うのだと分かっていた 父も母も、自分に目を向けてくれることはなかった 兄は、特別なのだ
それでも、兄は自分にとても優しかったし、両親よりも何かとかまってくれる兄が好きだった 淋しくない、ということでもなかったけれど…
その兄の右肩には、「yamaimo」と書かれた痣があった その痣が兄を特別にした そして、その痣が自分の大好きな兄を殺すのだと……知っていたけれど、自分には何も出来なかった
今も、何も出来ない
